【1945年坊ノ岬沖海戦】事実上最後の連合艦隊の戦い。大和の最後。

公開日： 2014/05/18 : 主要海戦・作戦

事実上、最後の連合艦隊の戦い。

1945年坊ノ岬沖海戦

●概要

1945年4月7日に、沖縄へ水上特攻に向かう戦艦「大和」と護衛艦艇を、米軍空母艦載機が迎え撃った海戦。

日本海軍が立案・決行した最後の大型水上艦による攻撃。

日本海軍の意地と面子を賭けた作戦だったが、戦闘詳報で自ら批判しているように、戦略的にあまりにも割の合わない戦いであった。

●内容

終戦間際、連合艦隊はすでにその多くの戦力を喪失していた。戦艦「大和」以下、生き残った主力艦艇や空母を中心とした新造艦艇の多くは燃料不足のため行動することができず、呉軍港などに繋がれていた。

3月末、連合軍は日本本土進行の最終段階として、沖縄本土への侵攻を開始。この防衛に当たる作戦が天号作戦である。

その作戦の一環として、第一遊撃部隊「大和」「矢矧」「霞」「浜風」「磯風」「朝霜」「冬月」「涼月」「雪風」「初霜」に出撃を命じた(天一号作戦)。

当時の時点で、アメリカ制空権下での航空機の支援もない水上特攻など失敗することは目に見えていた。

当然反対の声もあったが、「戦わずに沈められるより、戦って沈んだ方が良い」「大和に華々しい最後を飾らせたい」との意見が司令部では強く、反対の声を押し切り、作戦は実行へと移る。(各上層部などのそれぞれの考えなどは割愛)

こうして沖縄方面へと出撃した遊撃部隊に対して、暗号を解読+偵察機によりその作戦のほぼ全容を把握していたアメリカ軍は、大艦巨砲主義の終焉を全世界に知らしめ航空機の有用性を証明する為に航空戦で迎え撃つ態勢をとった。(当初米軍は戦艦部隊を使い夜戦で迎撃をするつもりだった)

約400機もの米艦載機が殺到し、ありったけの対空火器で必死の抵抗を試みるが、奮戦空しく「大和」に加え「矢矧」ほか駆逐艦4隻（「霞」「浜風」「磯風」「朝霜」）が沈没、3700名が戦死した。

約2時間に及ぶ熾烈な戦闘であったが「冬月」「涼月」「雪風」「初霜」の4隻は生き残り佐世保に翌日帰還した。

●結果

日本軍の損失に対して、アメリカ軍は気象状況的にも優位だったことも働き、艦載機12機、戦死13名とわずかな損失だった。

あらかじめ、結果は見えていたものとはいえ、「計画性のない特攻など成功するはずもない」「『思いつき』作戦は精鋭部隊をもみすみす死なせただけだった」と戦闘詳報では厳しく批判している。

また、「矢矧」に乗艦していた機関参謀は、戦後「世に不沈艦なるものなし。事前の準備なくして戦勝非ず」と述懐した。

後にこの海戦は、日本海軍の壊滅と終焉を意味するものとして広く認識されることとなり、当時の内閣はこの作戦の失敗を受けて、全員降伏を現実のものとして受け入れたという。

●参加戦力

第1遊撃部隊（司令長官：伊藤整一中将、参謀長：森下信衛少将）
第1戦隊
戦艦大和（艦長：有賀幸作大佐、副長：能村次郎大佐、砲術長：黒田吉郎中佐）：沈没。被雷8本以上、直撃弾10発以上。戦死2,740、戦傷117名。
第2水雷戦隊（司令官：古村啓蔵少将）
軽巡洋艦矢矧（艦長：原為一大佐）：沈没。被雷7本、直撃弾12発。戦死446、戦傷133名。
※矢矧に座乗していた第2水雷戦隊司令官古村啓蔵少将、矢矧艦長原為一大佐は、ともに生還。
第41駆逐隊（司令：吉田正義大佐）
冬月（艦長：山名寛雄中佐）：帰還。中破。直撃弾2発（不発）。戦死12、戦傷12名。
涼月（艦長：平山敏夫中佐）：帰還。大破、艦首部に直撃弾を受け大破。後進で佐世保に帰還。戦死57、戦傷34名。
第17駆逐隊（司令：新谷喜一大佐）
磯風（艦長：前田実穂中佐）：至近弾により機関室浸水。航行不能になり処分。戦死20、戦傷54名。
浜風（艦長：前川万衛中佐）：沈没。被雷1本、直撃弾1発。被弾で航行不能になった後、被雷し轟沈。戦死100、戦傷45名。
雪風（艦長：寺内正道中佐）：帰還。至近弾のみ。ロケット弾の直撃を受けるものの不発（帰還後判明）。損傷無し。戦死3、戦傷15名。
第21駆逐隊（司令：小滝久雄大佐）
朝霜（艦長：杉原与四郎中佐）：機関故障を起こし艦隊より落伍、正午過ぎに敵機と交戦中との無電を発信後連絡が途絶える。撃沈されたものと推定。隊司令及び艦長以下326名全員戦死。
初霜（艦長：酒匂雅三少佐）：帰還。至近弾のみ。損傷無し。戦傷2名のみ。
霞（艦長：松本正平少佐）：直撃弾2発。うち1発が機関室直撃、破壊。航行不能により処分。戦死17、戦傷47名。
対潜掃討隊（瀬戸内海離脱後、命令により反転帰還）
第31戦隊（司令官：鶴岡信道少将）
花月（艦長：東日出夫中佐）
榧（艦長：岩淵悟郎少佐）
槇（艦長：石塚栄少佐）